思い出の味は、美味しい記憶とともに。映画『ラストレシピ』感想

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死ぬ間際に食べたいと思う料理はなんだろう?

私はまだ20そこそこの年齢なので、あまり思い浮かばない。 けれどもう一度食べたい、二度と食べられない、思い出の料理ならある。

映画『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』は、そんな思い出の料理が、色鮮やかに蘇ってくる…そんな話だった。

思い出の料理

「いらっしゃい。よく来たね」

私が祖父母の家に行った時、そんな言葉とともによく食卓に出されたのが、「もち米の炊き込みご飯」だ。

茶色がかった米にはしっかりとダシがしみ込んでいて、中にはしいたけ、にんじん、こんにゃくなどが細かく刻まれて入っている。 噛むたびに、じんわりと優しい味が口に広がった。

料理嫌いの祖母が唯一作れる、得意料理。そして、子ども達に食べさせたいと練習をした料理でもあった。

しかし私が大きくなるにつれ、部活や習い事で忙しくなり、祖父母の家に行く機会は減って行く。 その炊き込みご飯の味も思い出せなくなるほどだ。

そんなある日、祖父の体調が悪くなり、寝たきりになったと聞いた。 もう祖父母の家に最後に行ったのはいつだろうか? それさえ思い出せないほど、疎遠になっていた。 疎遠になった理由はわかっている。祖父は私のことがわからない。痴呆だったのだ。会うたびに、無言で顔を見られることが怖く、私は足を運ばなくなっていた。

そして、祖父がひっそりと息を引き取ったのは、私が大学受験を目前に控えた、高校3年生の秋だった。

人はお互い支え合って、バランスをとって生きている。1人が崩れれば、パタパタとドミノが倒れるように、次々と状況が悪化した。

祖父の次は祖母。 体が徐々に弱り、意識不明で入院。

そして、別れの時は、私が大学進学で地元を離れている時だった。 子どもの頃は大好きだった2人を、私は、最後まで疎遠になったまま見送ったのだ。

『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』は大切な時間を思い出させてくれる

映画『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』では、死ぬ前に食べたい思い出の料理を再現する、神の舌を持つ料理人が主人公。

依頼人の希望通りの料理を再現し、高額な料金で振る舞う。 依頼をした人々は、たった一つの素朴な家庭料理でも、高額な金額を出して、泣いて食べた。

私も、あの味をもう一度食べられるなら。 そんなことを考えさせられる映画だった。

映画『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』詳細

映画『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』は、主演、二宮和也がつとめ、西島秀俊綾野剛宮崎あおい西畑大吾などがわきを固める。

監督は『おくりびと』の滝田洋二郎だ。さらに、企画に秋元康が参加。「永遠の0」の林民夫が脚本を担当しているなど、そうそうたるメンバーで作られた映画だ。

また、もともとこの話は、人気料理番組「料理の鉄人」を手がけた演出家・田中経一のデビュー小説『麒麟の舌を持つ男』(のちに『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』に改編される)が原作となっている。

あらすじ

容紹介第二次大戦中に天才料理人・直太朗が完成させた究極の料理を蘇らせてほしいと依頼された、絶対味覚=麒麟の舌を持つ佐々木充。彼はそれを"再現"する過程で、そのレシピが恐ろしい陰謀を孕んでいたことに気づく。直太朗が料理に人生を懸ける裏で、歴史をも揺るがすある計画が動いていたのだ。美食に導かれ70年越しの謎に迫る、感動の傑作ミステリー!
amazonより

自分が最後に食べたい料理は何か、そんなことを考えながら、ぜひ見て欲しい映画だ。

原作はこちら